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2004年

12月31日付Telegraph紙は、日本のアニメーションの将来に関する記事を掲載しました。表面的には現在絶頂期にある日本のアニメだが、宮崎監督のあとの才能が育っていないこと(宮崎監督が何度も引退宣言をしては撤回していることも触れられています)、賃金や労働条件の悪さからアニメーターが仕事を続けていけず、全体としてアニメーターの質が下がっていること、コスト低減のために海外への外注が増加しているなど、日本のアニメの将来の見通しはむしろかなり暗いものである、という記事です。

なお、Telegraphは英国の新聞ですが、この記事では「ハウル」は2005年秋に英国で公開予定となっています。


9月24日付Seattle Post-Intelligencer紙は、米国における日本製アニメの人気に関する記事の中で、「AKIRA」や「攻殻機動隊」とともに「千と千尋の神隠し」をとりあげました。記事は、ほとんどの米国人にとってアニメーションは子供向けの漫画映画であり、日本製アニメといえばせいぜいポケモンかポルノ(hentai)アニメというイメージであった、と述べた後、以下のように述べています。

何年もたって、そういう人たちの多くが突然目からうろこが落ちる体験をする。通常それは、口をぽかんとあけてしまうようなすごいアニメ、二つだけ例をあげるとすれば「AKIRA」や「攻殻機動隊」、を見ている最中に起こる。そしてもっと早くハマればよかったと願うことになるのだ。アニメウイルスは突然深く取り付く、一生治ることのない病気である。

「千と千尋の神隠し」
「攻殻機動隊」の目が溶けるような続編映画、「イノセンス」が公開されるまでは、この頑迷なウイルスの最新の(そして広く報道された)感染源は、宮崎駿のメインストリームでもあるが不朽の名作、アニメーション映画部門でアカデミー賞を受賞した最初の日本映画である「千と千尋の神隠し」に違いない。

124分のくだらない子供向けマンガ映画を見せるために地元のシネコンに子供を連れて行ったアメリカ人たちの多くは、そのかわりにまったく期待もしていなかった目と脳への刺激を受けることとなった―気骨ある少女が精霊の世界を覗く、まったく奇妙でしばしば超現実的(そして時には本当に恐ろしく不安になるような)物語である。

まったく美しい作品であるが、ディズニー配給の映画としてはかなりハードコアな映画である。実際、米国配給に関する契約においては、ディズニーは映画をノーカットで配給することに合意している。「千と千尋」は対象となる年若い観客に対してあまりにも信用を与えているので、ローンが組めるほどである。


9月17日付Seattle Post-Intelligencer紙は、最近米国で公開された「イノセンス」の批評の中で以下のように述べました。

宮崎駿(「千と千尋の神隠し」)が現代のアニメーション映画のもっとも偉大なストーリーテラーであるとすれば、押井は最も野心的なアイディアの探索者である。知性を試されるようなミステリーの中心にあるサイバーパンク形而上学は、ほとんどの米国SF映画の背後にあるアイディアよりも難しい。漫画にしては悪くない。


8月22日付PR Newswire Europeの記事によると、英国の映画評議会が2003年よりスタートした「プリント&広告基金」というプログラムにより、高い評価を受けた映画20本の広告とフィルムのプリントのために100万ポンドの資金が投入され、これらの映画は合計で1,500万ポンドの興行成績をあげました。

このプログラムは、ロンドンなどの大都市以外でも良質な映画が見られるように、フィルムをプリントする費用や広告費用を補助するもので、プログラム初年度に選ばれた20本の映画のうちの一本が「千と千尋の神隠し」でした。「千と千尋」には4万ポンドが補助された結果、英国では当初35だった公開館数が55館に増えました。


9月4日付The Times紙は以下の記事を掲載しました。

ベネチアでコンペ部門に出品された初のアニメーション映画の監督が、コンピューターのためにアートを捨てたとハリウッドスタジオを批判した。

英国の作家、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの小説に基づく宮崎駿の映画、「ハウルの動く城」は、大スタジオのテクノロジーの計算力ではなく、伝統的な手描きのセルアニメーションを使っている。

彼の過去の作品の一つ、「千と千尋の神隠し」は、2003年のオスカーを受賞し、日本で記録的な2億7千万ドルの興行成績をあげた。

アニメーションに関するハリウッド(スタジオ)の計画はコンピューターゲーム主導だと、宮崎は考えている。元ディズニーの重役で、現在は宮崎のスタジオジブリの上級副社長であるスティーブン・アルパートも同様に考えている。

「アニメーション映画の観客層のメインはティーンエイジの少年たちで、彼らはコンピューターゲームが好きだ」とアルパートは言う。

宮崎の二時間にわたる長編映画には、一秒間24コマ、何千枚という手描きの絵が使用されている。アルパートによれば、これは「シュレック」のようなCG映画に投資するほうを選んだ(ハリウッドの)大スタジオが失った技術である。

「かつては2Dの手描きアニメーションのトップスタジオであったディズニーが2D部門を閉鎖し、アニメーターを皆解雇してしまった」とアルパートは言う。「手描きアニメーションの創始者なのに、これは驚くべきことだ。けれど今ではディズニーはもう自分たちではやらないんだ」


Wired Magazine9月号は「アニメの巨人たちがやってくる」と題する長い記事を掲載しました。米国で高まる日本製アニメについて(「マトリックス」が「攻殻機動隊」に影響を受けたことも書かれています)のこの記事は、押井の「イノセンス」、大友の「スチームボーイ」、宮崎の「ハウル」という三大巨匠のアニメが米国で公開予定であり、今度こそ興行的な成功も見込めるかもしれない、としています。

記事は日本の漫画やアニメの歴史から始まり、「日本の再出現−今回は経済大国としてではなく文化大国として−をもたらす津波の一部に押井、大友、宮崎はなった」として、この三人のかなり詳しい経歴や、鈴木プロデューサーやIGの石川社長のコメントなども紹介されています。宮崎監督の「友人でありライバル」として、押井監督の「宮崎さんはやりたいようにやる完全な自由を欲する」「あの人が何よりも望んでいるのは専制君主になること」というコメントが紹介されています。


2002年

6月21日付のUSA TODAY紙のLilo&Stitchに関する記事の中でも、宮崎アニメがこの映画に与えた影響について語られています。「Liloは日本のアニメマスター宮崎駿(となりのトトロ、魔女の宅急便)に影響を受けており、『宮崎はファンタジー世界で真の(キャラクター同士の)関係を創り出す』と(監督の)デブロイスは言う。(劇中の)キキのコーヒーハウスはトリビュートである」


6月16日付TIME誌に、Disneyの新作長編アニメーションLilo & Stitchに関する記事が掲載され、その中で宮崎アニメがこの映画に与えた影響が指摘されています。「(脚本・監督のChris SandersとDean DeBloisは)日本のアニメーション・マスター宮崎駿から影響を受けている。宮崎の「となりのトトロ」と「魔女の宅急便」では魔法的な状況に愛らしい子供がおかれる。(宮崎へのトリビュートとして、映画ではナニがキキのコーヒーハウスという店をはじめる)」としています。(訳注:実際にはキキのコーヒーハウスはナニというキャラクターが働こうとする店であって、ナニの店ではないとのことです)


2001年

7月11日付Boston GlobeのJay Carrは、映画「ファイナルファンタジー」の批評の中で、脚本に含まれる神話的要素に触れ、「その意味で、ファイナルファンタジーは、同じく日本の監督によって作られたより効果的で心に響くアニメーション映画、もののけ姫を思い起こさせる」としています。(この評論家はFF映画そのものは気に入らなかったようです。)


英国BBCの映画評論番組Film 2001ではファイナルファンタジーやシュレックなど最近のアニメーション映画についての特集を放映しました。実写のようにリアリスティックなアニメーションというのは果たしていい事なのかについて映画監督のテリー・ギリアムは、技術が進歩しても話は相変わらず子供向けで、野心的な作品が少ない、とハリウッドの方程式に頼った大作アニメーション映画を批判しています。この特集の中で番組ホストのジョナサン・ロスは「こうした傾向の犠牲者の一つがPrincess Mononokeである。重要で大人向けのテーマを扱っているのにもかかわらず、この映画は米国では大変小規模な公開に終わり、英国では公開されていない」と述べ、もののけ姫の映像も流れました。(番組はこちらで見られますが、RealPlayerが必要です)。


MSNのネットマガジン、Slateはセサミストリートに関する記事の中で、セサミストリートがいかに良質で大人も子供も楽しめる番組かということを述べた後で、「自分の子供が見ている番組のほとんどには興味をひかれない。もし子供たちと一緒に良質のストーリーを楽しもうと思ったらArthur(注:TVアニメーションシリーズ)か、となりのトトロのような素晴らしい映画を見る」と「トトロ」に言及しました。


3月12日付TIME誌(USA版)は、子供向けビデオ市場のトレンドに関する記事の中で、トトロともののけ姫に言及しました。「ポケモンを見たことがあるなら、アニメ(日本製の独特なアニメーション)を見たことがあることになる。しかし、アニメは単に騒がしいモンスターについてのものばかりではない。二人の少女が森の生物と友達になる「となりのトトロ」やティーン向けの暗めの物語である「もののけ姫」は、このジャンルがいかに想像力溢れたものでありえるかを示している」としています。

記事にはPrincess Mononokeのビデオカバーの写真も掲載され、キャプションには「日本の宮崎駿は大成功したアニメを創った」と書かれています。


2000年

12月15日付LA Times紙において、アニメーション評論家CharlesSolomonは、クリスマスに子供達へのプレゼントとして推薦するアニメーションビデオのリストを挙げました。「トイ・ストーリー」などのメジャーな作品は「既に持っている可能性が高いから」ということで、「ちょっと変わった作品」をリストアップした中には「トトロ」「魔女の宅急便」「パンダコパンダ」が含まれています。

「トトロ」は「おそらく史上もっとも評価の高い日本製アニメーション映画」、「魔女の宅急便」は「宮崎駿による楽しい成長物語」「アメリカ製漫画に多い単純なキャラクターたちと異なり、キキは本物のたびたび矛盾する感情を示す、現実にいると信じられるような少女である」、「パンダコパンダ」は「宮崎はキャラクター達にちょうどよい程度の茶目っ気を与え、彼らが人口甘味料のように甘くなったり媚びたりするのを防いでいる。トトロ同様、パンダコパンダは子供達が持ちたいと願うような温かで魔法的な友達である」と紹介されています。

この他、小さな子供向けとして「バニパルウィット」、ティーン向けとして「カウボーイビバップ」や「老人Z」も紹介されています。


11月24日付LA Times紙においてSolomonは米国のアニメーション業界に関する記事の中で、「他のスタジオはディズニーのように成功するために、ディズニーを真似しようとした。(中略)北カリフォルニアのピクサー、英国のアードマン・アニメーション(注:「ウォレスとグルミット」の製作スタジオ)、そして日本の宮崎駿のスタジオジブリなど、観客は独創的な作品をハリウッド以外から求めるようになった」としています。


Whole Earth Review誌の2000年冬号に掲載された映画批評の中でKevinKellyは、「風の谷のナウシカ」(漫画版)について、「熱心なコミックスファンはこの作品をこれまでに描かれた最も素晴らしいグラフィックノベルだと考えている。これは「もののけ姫」などの映画で知られる伝説的なアニメーター宮崎駿による4巻にわたる作品である。この1000ページに及ぶ漫画は汚染された地球がいかに再生されるかという話である。主人公は若い女性であるが、他のコミックスと違い、若い女の子が読むのにふさわしい作品である。他の偉大なサーガ同様、(この作品を読む)喜びは細部にこそ宿っている。きちんと全体が構築された「他の世界」の、偏執的なまでに細かく描写されたディテール。環境エピックファンタジーとして、「ナウシカ」は一級品である」としています。


エコノミスト8月18―25日号に、アニメーション映画に関する記事が掲載されました。記事のほとんどはディズニーやフォックスなどのハリウッド製アニメーションに関してですが、記事の最後に宮崎アニメに関する言及があります。

(CGなどの技術進歩について述べた後で)
「昔ながらの漫画映画もなくなったわけではない。そのうち最高のものはトウキョウ製で、そのための単語さえ日本語にはある。Mangaと呼ばれるそれら(アニメーション)は、1958年製作の東映動画の“Panda and the Magic Serpent(白蛇伝)”以来、東洋ではとても人気がある。その多くはくずだが、この繁栄している業界では、実験作を創る事が可能であり、真に芸術的勝利と呼べる作品もある。そのうち二つは宮崎駿によるものである(「風の谷のナウシカ」と「天空の城ラピュタ」)。二つの作品はJ.R.R.トールキンとSFの女王アーシュラ・ル=グインの中間のようなファンタジー映画であり、「タイタンA.E.」にとっては、昔ながらのアニメーションがSFにおいていまだどれほどのことを成し遂げることができるかという教訓となる映画である。

さらに最近では、日本は近年でもっとも壮麗な伝統的漫画映画を作り上げた。「もののけ姫」は色彩とアクションに溢れ、ディズニーのオリエンタル映画、「ムーラン」よりも格段に優れている。国際市場向けに吹き替え版を作るという話があるものの、西洋ではいまだ公開されていない。ハリウッドは怖気づいているのだろうか?」

(訳注:なぜこの記事を書いた人間が「もののけ姫」はまだ西洋で公開されていないと思ったのかはわかりません。ただ、「エコノミスト」はイギリスの雑誌であり、「もののけ姫」はイギリスでは公開されていないからかもしれません。)


1999年

"The Tune"などの作品で知られるアニメーターのBill Plymptonはインタビューの中で宮崎監督に言及しました。

Q:このメディア(アニメーション)にふさわしいアニメーターはいると思いますか?

BP:幾人かは。「Aeon Flux」のPeter Chung。私は彼の大ファンだ。「Princess Mononoke」と「Porco Rosso(紅の豚)」をやった日本のアニメーターのミヤザキ。彼は本当にすばらしいと思うね。彼の作品はとてもヴィジュアルで、それが好きな理由の一つでもある。


The Video Software Dealers' Associationは、プレスリリースの中でディズニーの「ファンタジア2000」の公開について触れ、「しかし素晴らしいアニメーションのエンターテイメントを楽しむために映画ファンはアイマックスシアターに行く必要はない。以下はこれまでに作られた中で最も素晴らしいアニメーション映画の幾つかである」として挙げたリストの中に、「火垂るの墓」「となりのトトロ」「もののけ姫」が含まれています。その他挙げられた作品は、「ジャングル・ブック」「アイアン・ジャイアント」「ウォレスとグルミット:ペンギンに気をつけろ!」「オネアミスの翼」「美女と野獣」「トイ・ストーリー」「ファンタジア」「バグズ・ライフ」「ピノキオ」「白雪姫」「眠れる森の美女」「ムーラン」「アラジン」「ライオン・キング」「ウォーターシップダウンのうさぎたち」「ニムの秘密」「ダンボ」「ピーターパン」です。