2003年9月17日付のGuardian紙は原作者ダイアナ・ウィン・ジョーンズのインタビューを掲載しました。(以下「」内はジョーンズのコメント、()内は訳にあたってこちらで補足したもの)
「(「ハウル」は)とても映像的な本です。一度に4ヶ所も5ヶ所も魔法が出てくるところに宮崎は惹かれたんじゃないかと思う」「宮崎は(本を読んで)すぐにどうやって火の悪魔を描いてアニメーションにするか考えはじめたんじゃないかしら」「彼がどんな風になってるか見るのが待ちきれない。単なる動く炎にはなってない事は聞いているけど、知ってるのはそれだけ」
主人公が年老いた女性である事について:「本を書いているうちに、年老いた女性は若い少女達よりもずっと面白い(ファニー)って事に気がついたの」「宮崎もそれに気がついてくれた事を望むわ。ヒロインをおばあさんにするのはこれまでになかった事かもしれないけど、私はどうしてなのかずっと疑問だった。人間ってそこまで保守的じゃない」
ジブリとの接触はほとんどないそうで、「唯一の接触と言っていいのはスタジオから通訳と一緒に人々がやってきたときだけ。彼らは映画の映像的な背景を確立しようとしてたの」
原作は一部イギリスのウェールズ地方を舞台としていますが、ジョーンズはジブリからの訪問者達が間違った方向へ行っていると感じたとの事。「カーディフへいくのはやめて、もっと小さいウェールズの町のほうがいいと一生懸命説得したの。ハウルの城がある荒地(ムーア)がどんなものか、漁村がどんなふうなのか、彼らはわかっていないようだった。(小説の中の)ほとんどの場所は私が作り上げたものだったから具体例を挙げるのは難しかったけど、とにかく例を挙げて勧めてみたけど、そこへ行くのはあまり気乗りしなさそうだった」
後に、映画の舞台はフランスのアルザス地方がモデル*1であることが明らかになったが、ジョーンズはそれについては心配していない。「宮崎を長年尊敬してきました。物語のリズムと勢いを損なうことなく美しくて凝ったイメージを作り上げる力が彼にはある。恐れたり心配する立場には私はいない」
ジョーンズをインタビューしたAndrew Osmondによると、記事には載らなかったジョーンズのコメントは以下のとおり:
「映画がアルザス(の風景)に影響を受けているかもしれないというのはいいことです。私自身は一度も行ったことないけど、アルザスにはフェアリーテールから抜け出てきたような所があると聞いています。そしてインガリーは戦争で疲弊しているとはいえ、フェアリーテールの国にある事になっているのだから、これはとても合っていると思うわ」
ハウルの映画に影響を与えたと言われているフランスのアーチスト、ロビダ*2について:「ロビダの作品を知らないと思うのでコメントできないけど、宮崎は誰を真似ようとも宮崎だわ。でも面白そうね」
戦争について:「本の中ではインガリーの王は実際に戦争に備えて魔法の乗り物や武器をデザインさせるためにハウルに支払ってるわけだから、映画が実際に戦争を描いたとしてもそれは自然な延長という気がします。宮崎はそれほどでもないけど、日本のアニメは戦闘をとりあつかう傾向にある。宮崎はもののけ姫で始めた流れを引き継いでるように思えます。つまりこれは、私の作家としての傾向と、宮崎のアーティストとしてのキャリアという二つについての話なわけです。私は戦争を本と本の間(ハウルの続編は戦争後を取り扱っている)に置き去っておく傾向にあるけど、宮崎は戦争をそこに入れたい。それでいいと思う」
ジブリからの背景スタッフのウェールズ訪問について:「私が聞く限りではその後宮崎はそのスタッフのほとんどを入れ替えたそうなので、もしかしたら私と同じように感じたのかも」
「映画化について最初に聞いたときには、長年宮崎のファンだったから嬉しかった」「もし(映画化について)疑念があったら、いつだって映画化を拒否する事ができた。(原作を)変える事はわかってる。外国語を翻訳するように、本は映画に翻訳されなくてはならない。二つは異なるメディアで、活字で伝わる事がそのまま映像で伝わるとは限らない。多分出来上がった映画には私も驚く事になると思うけど、その覚悟はできてます」
「ハウルとソフィーを原作よりもずっと若くするというアイディアもあったとは聞いています。より多くの人にアピールするためだとか。でもみんな何度も考えを変えてるから*3、一体どうなるか見当もつかないわ」
「変えてほしくない事が二つあるの。少なくともところどころは可笑しいところがなければと思ってます。本を書いている途中で自分でも無茶苦茶笑ってしまったところがいくつかあって、それがこの本の本質だと思うの。もう一つはハウルのキャラクター。彼は見栄っ張りで、ずるくて、臆病で、すね屋で、聞き分けがなくて、そしてとても魅力的で能力がある。ジブリが彼をおしゃれで、惚れっぽくて、髪の染まり具合を気にするキャラクターのままにしておいてくれることを望みます。本が出版されて以来、世界中の若い女性達がハウルと結婚したいけど彼は実在するの?って聞いてきます。これ(ハウルのキャラクター)は失いたくはないわ」
「どうしてジブリの映画があんなにいいのか知りたい。信じられないほど高い作画の技術力とか、細部へのこだわりとか、もちろんそれもあるけど、それだけじゃない」「ジブリの映画には大人も子供も、ファンタジーが嫌いな大人でさえも、ひきつけられている。答は単に天才だってことなのかもね」
1.アルザス:Screen
International誌1392号(2003年2月)の記事によると、宮崎監督は鈴木氏とともに2001年末にフランスのアルザス地方を訪れたそうで、鈴木氏によると宮崎監督は「フランスでもドイツでもない、ボーダレスな風景が気に入った」との事。
2.アルベルト・ロビダ:19世紀フランスのイラストレーター/作家。当時の「未来空想小説」において未来(20世紀)のビジョンを発表した。前出のScreen
Internationalの鈴木氏のインタビューによると「まるで過去のゆがんだレンズから我々の現在を覗いているかのような、ロビダの科学と魔法が混じった考え方が宮崎にアピールした」との事。糸井重里氏と鈴木氏の対談に出てくる19世紀末の「空想絵画」はロビダの事を指していたと思われます。
3.キャラデザイン:さらに前出の鈴木氏のインタビューによると、ソフィーのデザインは最初は「かよわでデリケートなタイプ」だったそうですが、その後宮崎監督は「180度考えを変えて、ソフィーを強い意志を持った少女にした」そうです。
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